「考え深い」

 ある悲しい出来事について、「考え深い。」としている文を見かけた。

 「感慨深い。」と書きたかったのかなと思ったが、そうとしても違和感がある。そうすると悲しい出来事に喜びを覚えているように読めてしまう。(思慮の深さを表す語句として「考え深い」という形容詞があるが、そうとしても意味を取ることができない文だった。)

 この間違い方は、聞き間違いと意味の取り間違いが同時に起きて生じているというよりは、聞き間違えて「考え深い」という字を頭の中で当てた時に「深く考え込んでしまうような」という意味を作り出してしまって生じているのかな?と想像した。様々な語句の意味が広がっていく流れは、こういったプロセスで起こってきたのかな、とも。

 Twitterで日本語ツイート全体を検索してみると、「感慨深い」の意味で「考え深い」と書いているのであろう意味合いの文も散見される。昨今の名詞の使い方についてのスラング的文法が、「かんがいぶかい」が「かんがえぶかい」に聞こえてしまう可能性を高めてしまっているのかも?

「新・映像の世紀」第3集 時代は独裁者を求めた

番組公式サイトでネット公開されている動画へのリンク付きで、感想をメモ。

この回の中心人物はヒトラー。

ハイデガーのヒトラーへの賛美。(動画

ココシャネルの対独協力。(動画)(関連

国民車計画とポルシェ、そしてフォルクスワーゲンの興り。(動画

ドイツの軍需産業とアメリカ企業。(動画
ここは前回の『グレートファミリー』回でも見た、アメリカ企業と国際政治の動きが引き続き。(第2集に引き続いて、国家と企業のパワーバランスの変遷もとても気になる。)モルガン家と第一次大戦の賠償金について思い出しながら。

ナチスから勲章を受け取ったフォード。(動画
現地の駐ドイツ大使が送った書簡(アメリカがドイツの戦争を起こす可能性を高めているという指摘をしたもの)が印象深い。

独ソ不可侵条約から9日後に第2次世界大戦が始まる。
亡命したドラッカーは、独ソ同盟を予言していた。(動画
「今日は悪夢に過ぎないことも、明日には現実になる。」というフレーズも、大戦に向かう世界のありさまを感じて、強烈だった。

そして、ドイツの冷戦が冷戦へとつながっていく。
米ソの科学者獲得競争、V-2ロケットと大陸間弾道ミサイル。(動画
アメリカに渡ったフォン・ブラウンとアポロ計画。(動画

もうこの頃には政治のすぐ向こう側に大企業の存在がある時代がやってきてしまっていて、第2次大戦においても、経済の都合で世界が大戦に向かっていったという面があったことを知って驚いた。第1集で「イギ・・・リス・・・!!」となり、第2集3集で「アメリカーーーー・・・!!!!」となった。第4集ではどうなるのかな。

学生時代に国語の教科書で読んだエッセイを読み返そうと実家の押入れのもの全部出して教科書を開いたけどそんなエッセイはどこにも載っていなかった話

 表題の通りの記憶パニックホラーです。

 毎年春になると学生時代に読んだあるエッセイを思い出します。山里で暮らす著者がその生活の中で「時間の流れには、春になると元に戻ってくるような回転する流れとまっすぐ進む流れがある」ということに気付き、それを指摘するというものです。
 この指摘は当時の自分にとっては相当に強烈だったように記憶しています。(だからこそ、今になってもこのエッセイの内容を覚えているのでしょう。)カレンダーの月の数や春になると年度が始まるというシステムによって、いつの間にか「春になるとスタートに戻ってくる」という時間感覚が自分の中に相当強く根付いていることに気付かされ、その指摘に深く納得しました。四季が無い世界で生きる人たちにこの感覚は無いのかもしれないと考え、四季の存在が自分の価値観の一部を作り上げているかもしれないことに驚きました。そして、一直線に時間が流れていること、私たちの時間は生から死に向かってまっすく進んでいるというごく当たり前のことを、とても強く意識させられました。
 このエッセイを読んでいる最中のあの「なるほど!」と思ったあの時間は、間違いなく自分の人生に対する捉え方の基礎を作った瞬間の1つだと思っています。


 さて、例に漏れず今年の春もこのエッセイの内容を反芻して新年度に思いを馳せていたのですが、新元号効果もあってか、これだけ思い出すエッセイならば手元にちゃんと置いておきたいなあと思い立ってしまい、行動を起こすことにしました。


 まず、いったいこれは誰の何という作品なのかを調べます。
 高1か高2の国語で読んだ気がしていたので、当時の教科書に掲載された作品の出典をチェック。母校のウェブサイトの当時のシラバスから教科書情報と学習単元を拾って、それぞれの内容を検索してみました。
 その結果、高1で哲学者である内山節さんの随想『季節』を学習していることが分かり、そこから内山先生は東京と山村を往復しながら生活しているというプロフィールもヒット。著者の暮らし方は記憶と完全に一致していて、タイトルもそれっぽい。さらに名前に覚えもあるような気が。恐らくこれだろうと踏んで、実家の押入れから教科書を捜索することにしました。


 教科書をしまい込んだ箱は2段ある押入れの天井側の一番奥にありました。いったん押入れの天井側の段全部の荷物を出し、相当手こずりながらどうにか箱を引っ張り出してようやく対面できました。さっそく目次を見てみます。

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 冒頭1つ目にありました!くたくたになりながら「押入れの荷物全部出す」をやりきった甲斐があったというものです。
 っていうか他の収録内容もタイトルでもう懐かしい・・・。
 で、早速読み返してみたのですが・・・。

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 おもてたんと違う。もう全然違う。絶対これじゃねえ。
 読み切る前に分かりました。正直パッと見で分かりました。面白いことに、手に取って紙面を見た瞬間に急速に内容が思い出されて「絶対これじゃない」という判断が出来ました。たぶん2、3秒ぐらいでの判断だったんじゃないかなあ・・・記憶って面白いですね。
 そして、実際に当時の教科書を手に取ってよくよく考えてみると、学校の授業であのエッセイを読んだ記憶がないことに気が付きます。(「ペルセウスの鏡」や「水の東西」、「旅のノートから」なんて、タイトルを見ただけで読んだなあという感覚になれるのに・・・!)恐らくは、なんとなくの後付けの記憶や印象が脳内で付け加わっていたのでしょうけれど、何の根拠も記憶もないところから「高1か高2で読んだエッセイだ」とぼんやりと勝手に思ってしまっていたわけです。

 しかしながら、著者のプロフィールがなかなか特殊ですから、参ったなあと思いながらも内山節さんの文章であることは間違いはないのだろうと考えました。学年を勘違いしたのかな。
 ということでとりあえず、さらに上の学年で読んだ教科書も開いてみました。

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 内山節不在。そう甘くないですね・・・。

 次が国語の教科書の1冊。あってくれエッセイ。いてくれ内山節。

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 あーいないいないやばいいないいない・・・からの

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 いるーーーーーーーー!内山節いるーーーーーーーー!
 けど、
 「この村が日本で一番」は内容も覚えてるし探してるんと絶対違うーーーーー!ハイ詰みーーーーー!

 いちおう「この村が日本で一番」のページを開いて読んでみましたが、全然違いました。(これも素敵なエッセイですよねえ。)
 もうやけくそで、絶対載ってないってわかってたんですけども、中学校の国語教科書も全部見てみました。

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 3年間内山節不在。「絶対載ってないけどね・・・」って思いながら開くことで『絶対載ってないよなって思いながら開いたら載ってるパターン』に入ってくのにめっちゃ期待してたんですが見事に玉砕しました。これは載ってる流れだったでしょ・・・。
 というわけで、ぜえぜえ言いながら頑張ったのですが、実家押入れの大側索は無駄でした。押入れの荷物全部出しただけ。それだけ。

 あ、ここまで一連の作業で高校と中学の教科書について一気に調べたかのように書いてきましたが、実際は、GW中に1回実家に行って高校教科書を見てがっかりし、「もしかしたら中学のだったかも!?」と考えてGW明けにもう一度実家に行ってます。これだけのために2度も実家の天井側の押入れの荷物を全部出してるわけです。なかなかガックシきました。
 分かったのは、そもそもあのエッセイは教科書で読んだものではなかったということです。まあそれが分かっただけよしとしましょう・・・。

 ということで、教科書を引っ張り出すことでこの件は解決するものと思っていたのですが、甘かったです。どうにかあのエッセイが収録されている本を手元に置いておけるようネット検索をもりもり頑張るのみ。あれこれ検索してみた結果(著者がほぼ間違いなかったのでしばらく検索していたらすぐに判明し)、内山節の「時間についての十二章」というエッセイ集からの抜粋であることが分かりました!!

 ・・・なんだこれ。・・・全く覚えがありません。
 あんまり感慨も湧かないまま、マケプレで注文。

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 無事に手元へ届き、ぺらぺらとページをめくっていくと見事に「第二章 山里の時間」の冒頭に覚えのある書き出しから始まるエッセイが見つかりました。とても懐かしくて、「ああこれだ!」という喜びもありつつ、もう一度読み返せて純粋に嬉しかったです。内容もおおよそ覚えていた通りでした。これで目標は無事達成です!
 ・・・が!全く覚えのないタイトルの本に辿り着いてしまったせいで、見つかった達成感の一方で、「どこで読んだんだろうか・・・」という怖さみたいなものが強く去来してしまいました。すげえ懐かしい、けど、お前はいったい誰なんだ。この恐怖。記憶は後からの印象でいくらでも取り出され方が変わってしまうもの。そんなことは分かっていたつもりでしたが、見事にこれでハマってしまって、逆にちょっと感動すらしている次第です。
 ま、エッセイは手に入りましたし、実家の押入れめっちゃ片付いたんで良しとしましょうね。

 ただ、どうしてもモヤモヤが残るので、このエッセイとどこで出会ったのかについての調査はのんびりと継続することにします。(同世代の方で何か思い出したことがあったらぜひ教えて下さい!)ちなみに、奥さんとは「中学の国語の学習教材に出てきたかテストで解いた説」を有力視しています。
 ってことは・・・また押入れの一番奥から当時のテストの束を取り出さないといけないってこと・・・?

言葉で通信するアナログゲーム デクリプト[Decrypto]

 GWのボドゲ会で、カタンをやったあとに開封したのがこれ。

デクリプト

デクリプト

 時間が無くて1ゲームしかできなかったのですが、
 めちゃくちゃ面白くてまたやりたくて仕方がないです。

ゲーム概要

 この方の紹介記事が分かりやすくて良いので是非ご参照ください。
nicobodo.com
 簡単にいえば、単語と数字を対応させて、関連語を使って味方と通信をするゲームです。
 曖昧な関連語を使うことで、しっかりと相手からの盗聴を防げるかが勝敗を分けます。

遊んでみた

 通信の鍵となる単語カードは赤フィルムを通さないと読めないよう印字されていて、付属のボードに差し込むとこのように手前側(敵チームが対面になるように座って遊びます)だけに見えるようになっています。
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(ドラゴンボールのカードダスのステータスの読み取りとか、雑誌のおまけで付いてきた3Dメガネを思い出します。)

 このゲーム、勝敗条件の設計が絶妙で。通信側にいるときに「自チーム内で通信ができた」ことではポイントが稼げず、盗聴側に回った際に「相手チームの通信を盗聴できた」ことでポイントが稼げ、しかも「自チーム内で通信ができなかった」場合には通信側にペナルティが課されてしまうんですよね。
 これにより、安易に味方との通信の成功だけを考えた言葉選びはできません。自チームで共有している単語と数字の対応表を推測されてしまうことが相当の痛手になりますので、味方には知らせたいけど相手には知らせられない状況です。結果、言葉選びに頭をめちゃくちゃ捻ることになりました。

 こういう知恵の出し合いに重きのあるゲームなので進行がグダりそうなもんですが、各ターンの終わりに通信側の自チーム内での通信結果も公表されて数字カードも公開される設計がそれを防いでいますね。ほぼ毎回6つの関連語の正解発表があるようなものなので、1ターン1ターンでかなり情報量が増えていくのでスピード感も◎です。
 それと同時にみるみる言いかえで使う語も限られていって苦労します。なんていうか、推測されちゃう気しかしないんですよね。盗聴でポイントが入るせいで、盗聴する側の気持ちに過剰に入り込んでしまいます。結果、メンタルはサトラレ化します。
 友人あぽかんさんは中盤から相手の自チームでの通信の様子もかなり情報になることに気づき、真顔プレイを決めていました。

 また、単語そのものを当てる必要がないシステムにしているのも素晴らしい。運で適当に書いた数が1つ2つ当たっても、そこから次のターンで使える情報は引きだせません。むしろ相手の単語がより分からなくなって混乱したりします。特に序盤は当たっても外れても「え?」とか「は?」とか言う言葉が漏れちゃいますね。
 そのわけわかんなさが劇的に理解につながる快楽(これを身内語では「急速理解」と言います。)を何度も味わえる良ゲーです。

プレイ記録

 序盤はええんですよ、ボキャブラリー崩壊の本番は4ラウンド目あたりからですよ。

 例えば、今回対戦した相手側の立場で言えば、引いた単語セットがこう。
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 日常生活で「ダンス」を「ダンス」と察されずに4つも5つも関連する言葉を考えたりしないじゃないですか。こういうまあまあ日常になじんでる言葉こそ、相手にすぐ察されそうで逆にしんどかったのではと思います。

僕らチームの単語セットはこう。
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 「地球」はいろんな言いかえで味方に連想させやすかったんですけど、終了間際には相手にも察されていた感じがしました。
 一方で、「医者」はかなり曖昧な言葉で通信できたので、相手からするとこちらの「4」の傍受がやりづらそうでした。
 個人的には、「綿」の言いかえが相当きついなあと思っていて、お裁縫関連の用語を使いすぎるとすぐに「2」に対応付けられそうだなと警戒していたのですが、味方が「針」を「医者」に、「縫い針」を「綿」に対応させるという、初プレイとは思えないトリック攪乱プレイ!見事に相手の傍受を防いでくれました。
 そして順調に盗聴も進んで完封勝利。マーベラス。またやろう!

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(専用のメモ用紙が付属していて、使い勝手もいい感じでした。各ターンごとに、通信に使われた語、数字欄の縦1列目に相手の数の推測、縦2列目に相手チームの通信結果を書き込めます。裏表で通信側・傍受側で使い分けられるようになっているのも良いですね。)

余談

説明書のプレイ例のプレイヤー名が、「ボブ」と「アリス」でした。
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単語カードはどっさり収録&裏・表・上・下で使い分け可能で
よっぽどやり込まない限り単語リストを暗記してしまうことはなさそうです。

すごろくやさんの日本版ご制作、グッジョブです。
こういった形のゲームは今まで避けて来てたんですが、面白いですね。大発見でした。

このデクリプト、なかなか人気のようなので、
今後の単語拡張パックにも期待したいところ。
「日本向け単語パック」なんてあったら楽しそうだなあ。

デクリプト

デクリプト